収益改善のもっとも直接的な方法は、「ムダをなくし、ムダを生まない」ことです。ムダを減らせば、減らした部分がそのまま収益になります。これを実現するためのスマートな改善策が「見える化」、「定量化」です。
このことはかなり知られているところですが、うまくいかない事例の多くに、「見える化」「定量化」それ自体が目的となってしまい、なかなか収益改善に結び付かない、結果が出ないから継続するモチベーションが湧かないという状況がありました。
ここでは、「見える化」「定量化」を使って、組織の「風土・体質」を変化させ、収益アップという具体的な“結果”を出すまでの道筋のさわりをお伝えします。
組織の「風土・体質」を変えることは難しいように思えますが、やってみれば単純で簡単なことです。何度も経験しているので敢えて簡単そうに述べてみます。つまりは、経営者、管理層がかわることです(決して、従業員が変わること、変えることではありません)。現状をよしとしないことです。問題点、課題に気づき、次へ進む目標(思い付き、思い込みによるものではない)を立てられることです。その気になれば、今日からでもできます。
そもそも「収益改善」とは何なのか?
収益改善とは、「売上を伸ばしコストを下げる」ことです。つまり、入ってくるお金を増やし、出ていくお金を減らすことです。そして収益改善には、大きく次の5つの手段しかありません。
1.今ある製品・サービスの売上を伸ばす
2.売れる製品・サービスをつくって売る
3.原価のムダをなくす
4.販売費のムダをなくす
5.一般管理費のムダをなくす
上の5つのうち、1.2.は売上アップの方法で、3.4.5は経費(コスト)を減らす方法です。ところがところが、このうち1.2.の「売上アップ」策は、どうしてもそのときどきの状況に左右されがちです。売上アップの努力はもちろん大切ですが、「お客様」、「社会状況」という外的な要因が大きいので、どうしてもムラが出やすくなります。
そこで同時に考えたいのが、3.4.5の「経費(コスト)の削減」です。コストの問題は、多くの場合、会社の内部で努力が可能です。
コストを下げるということは、業務を効率化するということです。売上のように華々しい印象がないためか、なんとなく「小手先感」があるせいか、つい後回しにされがちではありますが、ムダ遣いしている、人、モノ、金といった経営資源を、もっと有効に使うことで、結果的に1.2の売上を伸ばすことにもつなげられます。
ムダな活動にもお金はかかっている
業務の中身を見てみると、実際にはサービスの価値に繋がる活動「だけ」が行われているとは限りません。
とくに意味はないけれど慣習的に行われていること、ムダだけれどムダだと認識されていないこと、あるいは「ムダなのに・・・」と多くの人が思っているけれど何らかの事情で放置されていることなど、現場ではいろいろあるものです。こういった活動にかかわっているコストを、まともに計算したことがあるでしょうか?
ビルメン業者の組織にありがちなムダをザっと挙げてみました。
・あちこちで同じような書類を重複してつくる、業務の重複のムダ
・利用されないリポートやデータ集計作業のムダ
・伝票や書類が必要なところに流れない、不必要なところにもとりあえず報告で流れるムダ
・情報が属人化しているムダ(業務連絡の非効率)
・報告のためだけの会議時間のムダ
・管理者が作業員の仕事をして、管理・監督しないムダ(またはマイクロマネジメント)
・管理者、責任者が多すぎるムダ
・社員一人にひとつの仕事しかさせていないムダ
・業務、作業量の偏りを放置している作業効率のムダ
・残業を野放しにしているムダ
・個人プレーでする営業活動のムダ
・費用対効果を意識しない御用聞き営業のムダ
・仕入れコストのムダ
・外注費のムダ
・資材の過剰在庫のムダ
・消耗品の非整頓、管理不備によるムダ
・不用品が場所をとっている(整理)ムダ
・使いたい資料、ものがすぐに取り出せない(整頓)ムダ
これらは本来なら収益として会社に残るべきお金です。営業活動でこれだけのお金を稼ぐのは、とても大変なことのはずです。
なぜムダや非効率が放置されているのか
ひと言で言えば、会社の「風土・体質」の問題です。効率化の意識が根付いていない。また、おかしいなと思ってもオープンにしづらいなどといった職場では、当然ムダや非効率は放置されることになります。ひどい場合は、ムダをあえて放置することで自分のポジションを確保している人がいるなど、根が深くなっているケースもあります。こういった望ましくない「風土・体質」を変えない限り、ムダと非効率はなくなりません。
今の「風土・体質」に問題があるとすれば、それは経営者や管理者、リーダーの責任として、自覚することが必要です。そして、会社にムダと非効率が蔓延している主な理由は、だいたい次の3つのどれかです。
1.経営者、管理層が、ムダに気が付いていない
2.経営者、管理層が、ムダに気が付いているのに、やり方を変えることへの不安や従業員からの抵抗を怖れて、踏み切れない。
3.経営者、管理層が、ムダに気が付いているのに、それを変える方法、変える手順がわからない。
経営者や管理者、リーダーがこの状態を脱しなければ、いつまで経っても、会社の「風土・体質」は変わらないのです。そして、まず自分からはできません。出来ないから現状の低空飛行が続いているわけです。成功体験豊富な実務家、実践家の援助を頼るほうが近道でしょう。
収益改善への効率化の決め手は「見える化」「定量化」
もちろん、仕事に関わることは、クレームのように定量化しやすいものばかりではありません。整理整頓のレベル、力量、危険度、進捗度、リスク、頑張っている、頑張っていない・・・・。こういったことは、パッと見ただけでその大小を推し量るのが難しいものです。
しかし、こういう見えにくいことをきちんと見える化することが、会社の「風土・体質」を変えていくうえで、重要なポイントとなります。
たとえば整理整頓なら、そのレベルを定量化することで、きちんとやっている現場、そうでない現場が明確になります。やれば必ずできることを放置しているわけですから、その差は管理者やリーダーといわれる人のやる気の差を示しているわけです。責任の所在が明らかになるので、頑張っている人を、適切に評価することができるようになります。
これからのビルメン組織の生産性アップのキモとは
「必ずやらなければならない、適材適所での少数精鋭化」
社員の適正を配慮して、与えた職務に応じた精鋭にしようとすることが大切です。全社員に、一般的に求められる社員像や経営者の社員に対する理想像を期待したり、押し付けてはいけません。社員は一人ひとり違います。
社員一人ひとりは、それぞれの適正に応じた役割があります。その適正と役割を見極め、社員の持っている能力をフルに発揮させる経営こそ、「全員精鋭」を目指した少数精鋭主義の経営の考え方です。「精鋭」とは、一般的な優秀さを言うのではなく、与えられた職務に対して水準以上であることです。その道におけるプロということです。その道のプロと、自他ともに認める精鋭が多いほど、その企業の人材力は高くなります。ビジネスにおけるプロとは、その道で他の追随を許さないレベルにある人材です。並み(普通)レベルはセミプロであっても本当のプロとは言えません。
少数精鋭とは、「精鋭を少数に絞って」ということであり、少数にすれば精鋭になるわけではありません。精鋭でないものを、いくら少数に絞ったからといって、精鋭でないことには変わりがありません。形だけ少数にしてみて満足しても、望む結果は得られません。
経営に携わる立場の者は、経営の効率化を考えその実現を実行するのが仕事です。それが経営感覚です。経営における人材活用は、使える人材を使える場所で働いてもらって成果を上げることです。一人としてムダにはできません。適材を適所において有効に働いてもらわなければならないのです。厳しい経営環境のなかでは人材の絞り込みが急務になってきています。
少数精鋭化ができる現状組織の見直しのパターン
1.現状の人材レベルを確認する(自社の人材の棚卸し)
2.職務別(仕事別)全員プロ化(精鋭化)になるため準備する(適材適所の観点で現状人材を見直す)
3.少数精鋭化ができる組織化を図る
4.パワー化(戦力化)の推進(多能化を図る)
5.新しいチャレンジのチャンスを与える
6.成果を公平・公正に評価する